2018年撮影


Laowa 24mm F14 2x MACRO ProbeをKickstarterのBackerと言う形で手に入れてもう随分時間が経った。意外と使用感とかを聞かれる機会が多いので、まとめておこうと思う。

なお最近全然表に出してないので知らない人も多い気がするが、僕はメインの被写体が爬虫類。サブで蛾類、次いで両生類ぐらいの感じ。なのでそれらを撮る前提の話をしようかなと。

例によって書きながら考えてるのでまとまりないかも知らんし、今回このレンズで撮った新しい写真を出す予定も今のところは無い。説明の都合で後々出てくるかも知れんけど。とりあえずこのレンズで撮った過去の写真なんかはこのページの最後辺りにまとめてリンクしておこうとは思っている。

このレンズの印象として一般的(?)にはその特殊形状と、「水中撮れるらしい」「倍率が2倍のマクロレンズ」と言う認識だと思う。が、それらが目的の人にはこのレンズは勧めない。他に幾らでも選択肢があるし、扱いやすく高画質で、そして安価な物が多いからだ。お世辞にもこのレンズはコストパフォーマンスに優れているとは言えない。

 まず「水中用途」だが、このレンズの防水機能はあくまでプローブ部分のみ。LED用のUSB端子が案外先についているせいで深い水には沈める事ができない。それはまだ許容範囲だとしても、ピントリングや絞りリングの防塵防滴性能が異常に低く、触ればわかるが建て付けが甘い。大丈夫と言う人もいるけれど雨粒ですら危険。そして先端部の気密性ゆえに内部結露を起こすとまず取ることは不可能と言っていい。
 実際僕は昨年冬のニチアカ撮影の時にあっさり内部結露を起こした。一応レインカバー用の素材でレンズをくるんで防護、冬季の室内外移動による過剰な温度変化に配慮していたにも拘らずなので、過酷な状況に持ち出すのには勧めない。まあこのレンズは新品で3年保証が付いていたので、修理前提の使用はアリと言えばアリ。(2020.02.15追記)最近Facebookのフォーラムでも水没がよく出ているので品質にムラがあるのだと思う。
 僕はLaowaの総合窓口に問い合わせた時、最初は症状も聞かずに有償修理と言われたが、配送の手配の際に詳しい症状を伝えた所、昨年のCP+に来日されていた中の人が直接持ち帰って下さり、結果無償修理でやってくれた(3年保証があるので大丈夫と言われた)。返送が海外発送なので諸々費用は掛かったが。ちなみに周りの人には「Laowaの修理はめちゃくちゃ遅い。半年ぐらいかかる」などと脅されたが、僕は1か月強で戻ってきた。まあ幸運な例かも知れない。

 脱線したが、水中用途であれば他のレンズでハウジングを使うなり、アクリル水槽にカメラ入れて沈めたりの方が圧倒的に高画質。棒状の物を水際から突っ込みたいだけなら、TGなどの防水カメラをロッドに付け、同軸ケーブルをアンテナとする事でWiFiの電波を拾う方法もあるし、円筒形のアクリル筒にレンズ突っ込んで沈めたっていい。電波法上このアンテナがどう扱われるかは知らないし調べる気も無いので推奨しないし詳しい説明も割愛するが、カメラありきなら同軸ケーブル一本あれば済むので安上がり。あとは内視鏡なんかも。

次に「2倍マクロ」として見た時だが、言うまでもなく同Laowa25mmとかの方が高倍率マクロとしては断然扱いやすいだろうし、倍率もあちらが上。あちらは近接専用とは言え、このレンズを無限遠で使うような酔狂な人間はいないと思うので、高倍率を求める人もほかの選択肢でいいと思う。画角が異なるが、同社には60mm、100mmの2倍マクロもある。

欠点ばかり先に挙げたので、話の流れで他の欠点も先に書いておくと、色が異様に黄色くなる事画質がたいして良くない事などがある。色乗りに関しては正確にキャリブレーションしていないので深く掘り下げる事は避けるが、グリーンがかったイエロー被りと言う印象。レタッチで取り除くのがやや困難で、このレンズを使用している作例では一目見てわかる事が多い。
 もう一つの欠点の画質だが、MTF曲線にもその特性が現れているように、デジタル初期の標準ズームにも遥かに劣る解像力。幸いコントラストはある程度維持されているので、あまり大きなサイズに出力しないのであれば粗は目立ちにくい。

(2020.01.15追記)
他にデメリットとして開放F14と言う暗さもある。
 暗い事による直接の影響としては、まず光学ファインダーでは晴天日中でも相当暗く、ピントの山が掴みづらい事がある。これは単に暗いと言うのもあるが、24㎜と言う広角故の被写界深度の深さにF14で輪をかけてピントの範囲が広がっているのでピークを探るのが難しい。 従ってLVでの撮影が推奨となるが、最低限露出プレビューを備えたレフ機、理想はミラーレスの方が適任と思われる。
 また、いくら24mmの広角だからと言ってもその全長の長さ故に手振れは起こしやすい。これも晴天屋外であってもライティングは前提だろう。

ここまで散々酷評したが、では何故このレンズを使うのか。と言う事だが、このレンズにしか撮れない/このレンズでなければめんどくさいシチュエーションがあり、それらの場面で使える機材としては最も解像力が高いから。

このレンズの強みは、フルサイズ対応で、口径が小さく最短撮影距離が長い(レンズが物理的に長い)割にレンズ先端から被写体まではそう離れない事、広角レンズであること。と僕は思っている。あとおまけで(?)近付くと危険なものに近づける広角だと言う事。

まずフルサイズ対応の広角マクロ…と言う事だが、正直APS-Cより小さなセンサーであれば36mm相当~の画角でしかなく、倍率を上げれば背景が取り入れ辛くなるため広角であるメリットが薄まる。また倍率を極端に上げる必要が無く、0.75倍程度までで良いならより高画質で扱いやすいシステムは他にある。(例えばAPS-CミラーレスでTAMRON24mm F2.8を使うなど)。

次に口径が小さい事だが…。よく地上にいる生物などを撮影する際に、ボディの底面からマウントまでの高さを気にする方がおられるが、あれは厳密に言えば間違い。重要なのは光軸が地面に対してどれだけ傾くか、地面からどれだけの高さにあるかの方。
 この点でこのレンズは圧倒的に優れており、よほど小さな被写体でもない限り、あまり高さのない被写体でも目線を下げやすい。また口径が小さい故にライティングも大型化せずに済むので、藪の中や岩の隙間などの狭い場所にレンズを入れやすいと言うのも大きなポイント。いわゆる虫の目レンズ的に狭い世界に入って行く事に優れているが、撮りたいビジュアルが普通の虫の目レンズで撮れるかどうかは熟考すべきこと。
 この口径の小ささを利用するか否かがこのレンズを必要とするかどうかと言っても過言ではないと僕は思っている。逆に言えば口径が小さく長いレンズと言う事をメリットと感じない/活かすビジョンが無い人は買う必要が一切ないと言う事。藪の奥にいる昆虫を撮りたい、岩の隙間にいる蛇やカエルをあまり警戒させずに撮りたい、と言う要求を満たす広角レンズとしては貴重な選択肢なので、まず自身の撮影スタイルと本レンズのメリットがマッチしているかがこのレンズの要否を分けると僕は思っている。

以下このレンズで撮った写真。

https://twitter.com/i/events/1095999850020139009

リンク中の水中3つは前述した通り、他で代用が利く例
ホウジャクの写真は届いて1週間以内に撮ったものなので今見ると色々思うところがあるが、他の広角レンズやマクロと比較した例は以下。

Twitterのモーメントにあるカマキリもそうだが、藪にレンズを突っ込んだ例は昨年末に撮ったボーベリア菌などもそうなので貼っておく。夜間に撮ったので広角であるメリットが死んでるけど、細長いレンズだからこそ撮れたもの。まあ被写体を引っ張り出して撮るなら関係ないが。

それから触ると危険なものに近づきやすいと言うのは僕の被写体ではマムシ等の毒蛇があげられるが、その写真も以下に少し。

とりあえずこんな感じで。
この記事中の説明と違うやんけって事もあるかも知れないが、過去の物は試行錯誤の過程と言う事でご容赦願いたい。

それから余談的ではあるが、たまに聞かれるのでここで書いておく。
こう言った電子接点も持たないフルマニュアルのレンズの場合は、発売されているマウントの中でとりあえず一番フランジバックが長いマウントの物を買うと言うのは一つの正解だと思う。理由はマウント変更する事になってもマウントアダプターさえ用意すれば使いまわせるから。



2 Comments on “Laowa 24mm F14 2x MACRO Probeを1年2か月使ってきた雑感など”

  1. 待ってました!24mm日本人レビューはとても少ないですよね。。色々衝撃の内容でした。
    水中用途が特に魅力的だったのですがなるほどプローブ部分のみ。限界まで沈み込めお魚さんの撮影を、などと考えていましたがどうやら甘かったようです。画質が弱いことも痛いですね。とはいえたまおやさんが掲載されているお写真を見る限りボクには十分かもしれません。
    特に1枚目のカマキリのお写真を以前Twitterで見てから惚れ込みました。
    描写力もそうですが、おっしゃる通り口径の小ささとレンズの長さが何よりもウリですね!
    それこそ「自然写真」においてはこれ以上ないくらいのメリットですね。潜むカマキリを撮るために葉っぱを動かしたり、終いにはカマキリに移動してもらったり。出来れば自然に撮りたいですがどうしても割り切れず結果を優先してしまいますorz
    人間のいない世界のようなリラックスした生き物のお写真を楽しみにしております!!

  2. レビュー以前にそもそも所有者がめちゃくちゃ少ないですね…。海外勢も動画用途が多く、スチルで使っている人は少ない印象です。

    魚の撮影には残念ながらはっきり言って向いてないと思います。カエルですらやや厳しく、流水性のサンショウウオとかは最早ムリゲーでした。流水性サンショウウオは一回Twitterに貼った気もしたんですが、掘り出すのが面倒で割愛しました←。レンズ長が40㎝ちょっとしかないので、浅瀬から水平距離で考えても大して届かないんですよね。

    画質はあえて大きな画像で等倍鑑賞するとかでなければ一般的な用途にはギリギリ耐えられるレベルではあると思います。SNSやブログに貼るぐらいならそこまで粗は目立たないかなーと。

    >「自然写真」においては
    狭い隙間にいる被写体でもそうですが、生物は無機物の接近には案外無頓着な種も結構多く、そう言う意味でもかなり有用です。150㎜マクロ程度で接近できる程度の距離にまで近づける被写体であれば、このレンズでの広角表現も選択肢に入ってくるので、至近距離では逃げてしまうような蝶なんかにも意外と使えたりするのは強いです。

    ただ本文中に書き忘れましたが、F14なので日中でもライティングはほぼ必須、光学ファインダーでは暗黒なのでピントの山が使いづらいなどと言ったデメリットもあります。LVで撮影するにしてもチルトやバリアングルの方が楽ですし、露出プレビュー機能が備わっていないようなカメラ(現行であるのかは知りませんが)では実用に耐えないと思います。まあミラーレスの方が多分適任ですね。

    ハマる人には面白いんですが、必要としない人には恐らく何が良いのかわからないレベルだと思うので、万人にお勧めし辛いと言うのがネックです。あとお値段的に考えるとコスパはだいぶ悪いです…。

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