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◆クローズアップ撮影テスト
作成日:2011.09.27  更新日:2013.01.02

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■始まり
 私は近接撮影が好きで、いわゆるなんちゃってマクロから等倍マクロまで色々買ってみましたが、それらとクローズアップレンズやテレコンを組み合わせたらどこまで倍率を上げて撮影できるのか試してみたくなりました。特にフィールド撮影においては、魚眼レンズにテレコンを装着しての撮影も重宝しますし、最大撮影倍率を等倍以上に上げた昆虫写真等、色々用途が思いつきます。どんな機材の組み合わせでどんな撮影ができるのか事前に知っておくと、実地で活かせると思うので試してみました。
  尚、文中で最大撮影倍率○○倍相当のような表現をしますが、厳密に○○倍と言う訳ではなく、正確に表現するのであれば「最終出力サイズを統一した際に、比較元の倍率に対してどの程度拡大撮影できるか」を言い換えた物とご理解下さい。つまり"等倍のレンズを用いてAPS-Cのボディを使った等倍域の撮影"をこの表現に当てはめると、1.5倍相当になる、と言う事です。ちなみにこのテストで用いているボディはD90(APS-C)です。

■撮影設定及び使用機材
 試写した環境は、被写体にZoomMicroNikkor70-180mmF4.5-5.6Dを用い、刻印部分のクローズアップ撮影を試みました。今回は画角・倍率の差を見るための簡単なテストなため、三脚を使用しない手持ち撮影をしています。その為僅かなピンズレ等には目を瞑っていますのでご了承下さい。室内手持ちの簡単接写テストなので、光量を補う為に外部ストロボをリモート発光しています。

おおよその撮影環境は上記の写真の通り。

簡易テストに用いたレンズは以下の通りです。
◇マスターレンズ
・Tokina AT-X 107 DX Fisheye (10-17mm)⇒(2倍テレコンによる試写のみ)
・SIGMA 70mm F2.8 MACRO EX DG
・TAMRON SP AF 28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A09N II)

◇コンバージョンレンズ
・Kenko MC7 x2 テレコンバーター
・トダ精光 ワイドコンバージョンレンズ DSLR-07N


■Tokina AT-X 107 DX FisheyeにKenko x2テレコン併用
 クローズアップテストの前に、魚眼に2倍テレコンを装着して撮影した物も載せておこうと思います。
  フィールドで昆虫や花を撮影する場合に、背景や空も入れた写真の撮影をする際に最短撮影距離の短い魚眼レンズはよく使われます。 ただ魚眼レンズをそのまま用いてしまうと、その広い画角ゆえに必要ない物まで写り込んでしまったり、肝心の被写体が大きく歪んでしまう事がよくあります。そんな時にテレコンバーターを挟む事で、最大撮影倍率を上げ、画角を少しだけ狭めた超広角マクロのような使い方が可能となります。元々このレンズは最短撮影距離が14cmなので、レンズ先端数cmの被写体を撮影できます。

 上の例は10mm端でx2テレコン使用ですので焦点距離は20mm。35mm判に換算すると30mmとなります。被写体はニホンヤモリ型ストラップで、大きさの比較用にレンズリアキャップに乗せています。
  やはり超広角である事は変わりませんので歪曲が大きいですが、主要被写体は違和感なく写っている気がします。背景をもう少しボカす等すれば使い道は更に広がるでしょうね。

下はオマケですが、107の望遠側を使った撮影です。

 17mm側に2倍テレコンを使用すると34mmとなり、35mm判換算で51mmです。換算51mmでの接写は最大撮影倍率を考えれば、同TokinaのM35や、MicroNikkorの40mmF2.8Gを使った方が良いのでしょう。またフルサイズ機ではSIGMAの50mmマクロや、MicroNikkor60mm等があります。とは言えこちらも実用に耐えないような物ではないので、接写もできる広角ズーム(20-34mm(35mm判換算30-51mm))と言う使い方であれば無駄ではない気はします。


■クローズアップ撮影(マスターレンズ:SIGMA 70mm マクロ)
さて、本題のクローズアップ撮影テストです。
 お手軽簡単に撮影倍率を上げる方法としては、クローズアップレンズの装着があげられます。ただしクローズアップレンズはピントの合う範囲が物凄く狭くなってしまうので、ワーキングディスタンスを動かす事(クローズアップ以外の被写体から離れた撮影等)ができないのが欠点です。一方でテレコンバーターを使うと露出倍数がかかる、無限遠が出なくなる等の弊害はありますが、ピントの合う範囲を広く保ったまま撮影倍率を上げる事ができます。

では早速試写を。
まずはマスターレンズ単体で最大撮影倍率(1.5倍相当)で撮ったものから。

刻印部分の地の質感等もよく見えます。

今度はマスターレンズにx2テレコンを併用してみましょう。

コレもレンズの指標を頼りに最大撮影倍率で撮影していますので、実質2倍前後の撮影倍率となっています。(焦点距離で140mm)
付着した埃やゴミが良く見えますね(;´∀`)
このレンズにKenko MC7テレコンの場合、AFも普通に効くのでお手軽です。

次にクローズアップレンズの装着。
使った物は、トダ精光のワイドコンバージョンDSLR-07Nを分割した物。このワイドコンバージョンレンズ、前後分割する事でクローズアップレンズとなります。一般のクローズアップレンズで言うNoや、+で言えば幾つになるのかはわかりませんし、トダ精光に問い合わせても回答が得られなかったため不明ですが、レンズ先端2cm付近でしかピントが合いません。

どうでしょう。2倍テレコンには僅かに及ばないものの、それでも大きいですね。
正確に測ってはいませんが、おおよそで倍率にして1.6倍程だと思います。
ピント範囲の欠点はありますが、レンズ先端にねじ込むだけなので手軽感は高いですね。

お次はワイドコンバージョンを分割せずにそのまま装着した例です。
焦点距離が短くなる事で、最短撮影距離がほんの僅かですが縮みます。

最短撮影距離がほんの僅かに縮んだ分、最大撮影倍率も上がります。こちらも目算ですが、おおよそ1.15倍程度。
ほんの僅かな差ですが、少し寄れるようになりました。


折角なので、x2テレコンバージョンにクローズアップレンズをあわせて装着してみましょう。(焦点距離140mm)

これはかなり大きいですね!
色収差がキツイ気がしますが、マスターレンズ単体と比べると3倍程度でしょうか。
ピントが浅く、フォーカスが大変ですが、改造なしでここまで寄れるのは貴重です。
用途と被写体さえきちんと選べば使えるシーンもあるかもしれません。

ざっくりテストですが、x2テレコンはマスターレンズの最大撮影倍率も2倍。
トダ精光のDSLR-07Nを分割したマクロコンバージョンではマスターレンズにSIGMA 70mmマクロを使う場合の最大撮影倍率はおおよそ1.6倍位でしょうか。分割しないワイドコンバージョンでは1.15倍前後ですね。
今回のマスターレンズの例ではこのような倍率となりましたが、クローズアップレンズを使った場合の倍率はマスターレンズが変わると変わってきます。これは元々のレンズの最短撮影距離や、最大撮影倍率等に影響されると思います。


■マスターレンズにA09NIIを用いたクローズアップ撮影
 なんちゃってマクロ付きのズームレンズのクローズアップも試して見ましょう。
タムロン公称では望遠側75mmでの最大撮影倍率は1/3.9ですので、0.2564102564102564倍(以降おおよそ0.256倍)となります。広角側でも最短撮影距離が変わりませんので、画角が広がる分だけ最大撮影倍率が下がります。画角が広がる分と言うのが、望遠端32.11度、広角端75.23度ですので、おおよそ2.342883836810962倍(以降おおよそ2.34倍)画角が広がる事になります。言い換えれば、2.34倍最大撮影倍率が「落ちる」事となります。 つまり広角端の最大撮影倍率は0.256÷2.34≒0.109倍と言うことになります。

では実際にマスターレンズのみで最大撮影倍率での撮影をしてみましょう。
まずは75mm望遠端から。

0.256倍と言う数字通り、あまりクローズアップ撮影することができません。

次に28mm広角端です。

更に小さくなりました。
被写体の大きさから望遠側と比べて倍率を計算してみると、おおよそ0.10倍となりほぼ先程の計算通りとなります。

このレンズにx2倍テレコンを装着してみましょう。
なお、D90にこの組み合わせのレンズを使うと、オートフォーカスが効きません。
2倍の露出倍数でF5.6となる筈ですが、AFが定まらずに行ったり来たりしてしまいます。
では広角側28mmから。(56mm)

コンバージョンレンズなしの75mm側最短より僅かに小さい、マスターレンズのみの時と比べて、おおよそ被写体の大きさは2倍(撮影倍率にすればおよそ0.2倍)で写っています。
予想通りですよね。

同様に75mm側。(150mm)

こちらも目測ですが、マスターレンズのみの撮影に比べて被写体の大きさはおおよそ2倍なので、撮影倍率にすれば0.5倍程度でしょうか。期待通りですね。

では、このレンズにクローズアップレンズを付けた場合はどうでしょうか。
やはり広角側から見てみましょう。

広角側なのにかなり大きいですね。目算で0.4倍程度…と言った所でしょうか。
x2テレコン+75mm側にもう一息…と言う大きさで撮れています。
元々最短撮影距離33cmとやや長いレンズですが、レンズ先端2cmでしかピントの合わないコンバージョンレンズを装着する事で、被写体までの距離を縮めて撮ることができました。
しかしSIGMA 70mm マクロの例と比べると、まだ等倍には程遠いですね。

望遠側も見てみましょう。

こちらは広角側に比べるとそれ程大きく感じませんね。
同じ距離だけ近づいた場合、画角が狭いとあまり倍率が高くなりません。
こちらも等倍には遠く、0.6倍前後でしょうか。
それでもテレコン併用の場合より大きく写すことができています。

クローズアップとテレコンを併用する前に、ワイコン装着も試して見ます。
例によって広角側から。(20mm)

最短で撮影しているため、28mmコンバージョンレンズなしの時と画角的な差が殆どありません。
が、広角20mmでここまで寄れるレンズ…と思うと価値はあるのかもしれません。

続いて望遠側。(52mm)

こちらもマスターレンズのみの望遠端と画角的に大差がありません。
コンバージョンレンズの装着で画質が劣化していますし、元々52mmはマスターレンズのみで撮影可能な焦点距離なので、コンバージョンレンズをつけての撮影はあまり意味がないでしょうね。(ただ、マスターレンズの特性上、マスターレンズのみの52mmより僅かに撮影倍率は上がっているはずですが。)

さて、いよいよ本命のx2テレコンとクローズアップの併用です。
例によって28mm広角側から見ます。(56mm)

これもかなり大きくなりました。 目算ですが、おおよそ0.75倍…と言った所でしょうか?
ただ、この程度の倍率であれば、素直にSIGMAの50mmや、MicroNikkorの40mmを使うべきでしょう。コンバージョンレンズを二つ購入する予算があれば、無理なく購入可能かと思います。

最後に望遠側です。(150mm)

こちらは等倍を超えています。1.25倍程度でしょうか。
コンバージョンレンズを2つ使っているので、画質の劣化は酷いですね。
全く見るに耐えない写真かどうかは見る側の判断に委ねますが、あまり使用価値があるとは言いがたいでしょうね。


いかがだったでしょうか。
まとめると、テレコンバーターを用いた最大撮影倍率のUpは(本来の目的の焦点距離を伸ばす場合を除いて)、 純粋にコンバージョンレンズの倍率と同じだけ、最大撮影倍率を引き上げる事ができます。画質の劣化具合はマスターレンズとテレコンバーターの相性(マスターレンズの後玉とコンバーターの前玉が近い方が画質が良いと言われています)、テレコンバーター自体の性質によります。
元々等倍撮影が可能なマクロレンズや、コンバージョンレンズを装着する事で他に代替が利かない焦点距離となるレンズに装着する事で真価を発揮するでしょう。

一方、クローズアップレンズは最短撮影距離が固定されるため、装着後の最短撮影距離よりマスターレンズの最短撮影距離が充分に長い方が、より倍率アップする事になります。が、ワーキングディスタンスが固定されてしまうのがデメリットでしょう。

上にあげた以外のクローズアップ撮影方法としては、ベローズ(蛇腹)や接写リングを使う方法がありますが、原理的にはテレコンバーターの場合と同じです(テレコンにはレンズがある、他にはないと言うのが違いです)。


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