珍しく本日2回目のポストです。
今回はTwitter等で定期的に上がってくる、野生動物に対するフラッシュ使用のお話です。昨日も何やらTLでヤバそうなの見かけたので…(笑) フラッシュ使用の是非は色々議論されているかと思いますが、いずれを見ていても考慮不足な感が否めません。今回の話は考慮漏れはないのかと言われると、ぶっちゃけガバガバだと思います。今の僕の見解なので、新しい情報が入ればまた考えは変わるかも知れません。考慮漏れも色々あるかも知れません。僕の今回のテーマも、ある角度から見た場合の話なので、別角度から見ると結論が変わるかも知れないと言う事を予め申し上げておきます。

さて、フラッシュ使用の危険性を考えるにしても、生物学的にアプローチするのか、光学的にアプローチするのか等色々ありますが、折角写真のブログと言う事なので、写真の撮影設定の方からアプローチしてみたいと思います。
とは言え、それ以外の要素を無視する訳にもいきませんので、軽くだけは触れておきますね。

■まず一番多く問題視される(と僕が思っている)のは、野生の鳥獣に対するフラッシュ使用。
このケースで問題なのは、そのほぼ全てが直射だと言う事。いわゆるポン焚きですね。
鳥や獣の場合はオフカメラで被写体の近くから照射するなどと言う事は基本的に無理だと思うので(当然ですが逃げる)、このケースについては僕もあまりよろしくないのではと言う意見を持っています。暗い所で鳥を撮らないのでよく知りませんが、鳥についてはまあ基本的に良くはないでしょう。驚いたり目くらましになって墜落したりと言うケースは容易に想像できます。
イノシシ、ウサギ、鹿等の生き物も、眼に直接的な影響は無くても驚いて暴れたり等するので、状況や照明方法を選ぶべきでしょうね。と言うのが直射に対する僕の見解。

■次に動物園などですが、動物園等では禁止する理由が様々です。そもそも光に耐性の無い動物を展示してある場合もあれば、光で驚いて暴れる動物がいるからと言う理由の場合もあるかと思います。色々です。なので、この辺は動物にフラッシュの是非云々以前に、動物園のルールに従いましょう。と言うのが全てかなと。

工学的かつ光学的にアプローチするのであればフラッシュのキセノン管がワット辺り何ルーメンの発光量で波長特性は…と言う風に考えて行けば、他の光源との比較はしやすいかと思いますが、今回はそう言った話はパス。

で、今回の題材にしようと言うのは、僕がメインの被写体にしている爬虫類のお話。中でも特に夜行性の種ですね。
まず初めに下の写真をご覧頂きたいです。

夜に撮ったアマガエル(両生類)の写真ですが、いつもの僕の写真からすると、雰囲気が違うかなと言うのがわかって頂けると思います。
実はコレ、実測100ルーメンのLEDライトをアマガエルの後方上部約1mの所から照射して、カメラは地面に置いて撮影しています。
この時の撮影設定はf5、ss1/13、ISO1600です。

次にこの写真をご覧ください。

何の変哲もないド素人感丸出しのゆいレール、那覇空港駅です。
沖縄の晩夏の空なのでおおよそ10万ルーメン位でしょうか。
撮影設定はf/2.8、ss1/1250、ISO100です。

この二つの写真から普段僕が撮っているような写真に必要なフラッシュの閃光量を計算したいと思います。(素人計算なので間違っていたり、雑なまるめをしているかもしれませんが)
まず普段の夜間撮影で、僕はいつもf/8、ss1/150、ISO100位を多用します。沖縄の空の写真から比べるとf値の差は3段分。ssも3段分、ISOは同じです。必要な光量はと言うとf値が3段分違うので3倍明るい光が、一方ssを3段落としているので1/3倍で相殺され、沖縄の空と同じ10万ルーメンがおおよそ必要なのかなと。実際夜間はもっとアンダーな写真を撮るので約1/3程度の3万ルーメンと言う所でしょうか。

一方上のアマガエルの方から比較して計算してみると、f値の差が1段分、ssが約3段分、ISOで4段分です。f値+SS+ISOが暗い方向に合計約8段分も暗くなる計算です。単純に計算して100lm*2^8の25600lm。上のアマガエルの写真がやや暗い事を考慮して、こちらもおおよそ3万ルーメン…と言った所でしょうか。

…つまり普段僕が撮るような撮影だと露出設定によって多少差異はあるものの約1/2000秒と言う一瞬の閃光ですが、3万ルーメン位の照度が必要になる…と言う事です。
3万ルーメンと言えば車のHIDが約3万ルーメンなので、通過する車に照らされるよりかは遥かに少ない光と言えます。
例えば路上に落ちているカエルを走行中の車から見つけ、車を止めてカエルをどけたとして、その間数秒~数分に渡って3万ルーメンが照射される訳ですが、それから比較すると遥かに少ない光量と言えるのではないかなと思います。また前述の太陽光に照らされた夏場の明るさが10万ルーメンと言われているので、眼に与える影響で言えばあまり大した事はなさそうです。

次に被写体の動物を驚かせてしまう事になるのかどうか、ですが…
夜間採集に慣れている人であれば経験があると思いますが、100lm未満の暗いライトでもカエル等を照らせば瞳孔を小さくし、眩しそうな仕草を取ることがあると思います。100lm程度の暗いライトで照らされた状態から3万ルーメン相当のフラッシュを当てれば眩しくて驚くかも知れません。直射がよろしくないと言われるのはこのあたりでしょう。冒頭にも書きましたが、鳥獣に対するフラッシュ使用が良くないとされる議論はほぼここに焦点があてられていると思います。
しかし、カエル等は太陽光の元にいて眩しそうな仕草を取る事は殆ど無いと思います。何故でしょう?
僕はその答えは照射角にあるのではないかと思っています。と言うのも、たった100lmのLEDですら当て方によって眩しそうにするカエルが、夜間灯火に集まってきたり、太陽光の下にいて平然としていられるのは理屈に合わない。即ち眩しくない角度で光を利用しているのだろうと言う事です。(ここは僕の推論です)。人間でも太陽を直視するのは辛いですし、60w電球ですら直接見るとかなり眩しいものです。しかしその眩しい光を死角である頭上から受ける形では眩しいと感じない。つまりそう言う事なのかなと。もちろん人と蛙やヤモリでは視野が違いますから、その辺の考慮は必要でしょう。

で、僕の撮影方法に戻りますが、僕は普段カエルやヤモリの死角となる角度から光を照射するようにしています。今の所この方法に変えてからと言う物、カエルやヤモリがフラッシュ光に反応した事はありません。飼育動物達も稀にフラッシュ撮影をしますが、彼らも10数年経った今、特に変わらず過ごしています。

計算だけでなく経験則も踏まえた話ではありますが、一応僕の目の届く範囲で起こっている事象ではフラッシュ光は(当て方を工夫さえすれば)大丈夫と言うのが結論です。ただし、眼に対して平行光束が届くようなポン焚き等の手法を用いた場合は僕の与り知るところではありません。悪しからず。

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