「臆病で言葉の通じない隣人」- 僕は蛇の事をそう言う生き物だと思っている。

蛇ガチ勢で集まって探しに行くと一晩で相当な数を見つける事は容易いが、撮影者を意識していない蛇の写真を撮る事は非常に困難で、数百匹に一度位の頻度でしかまともな写真は撮らせて貰えない。臆病な蛇は人を認識するとすぐ姿勢を変えてしまうので(一般人受けはするのだが)とても生態写真と呼べるような物にはならず、そこが蛇撮影の最も難しいポイント。捕獲や進路妨害すれば撮影自体は容易いが、蛇好きを自称するからには怯えた蛇の写真は撮りたくない。怯えた蛇写真は全く魅力を感じないどころか嫌悪感すら覚えると言うのもある。あくまで自然写真と言える物を撮り続けて行きたい。
まあそれは置いといて今回は久しぶりに撮影者(僕)を全く意識していない蛇の姿を撮る事が出来た。枝などを完全に回避する事は出来なかったが、ゆったりしている蛇の姿はとても好きなので満足だ。蛇は攻撃的だとか気が強いだとか言うイメージが先行している人も多かろうが、敵に対峙していない平時の蛇はとても穏やかな顔をしているものだ。気の遠くなる話だが、少しでも蛇への偏見を緩和出来れば…と言うのが、僕が蛇を撮り続ける動機かも知れない。ハードルは多く厳しいが理解してくれる人が増えると嬉しい。

ちなみにアングルのせいで、正面を見据えているように見えるけれど、実際は人等全く気にせずゆったりしていた。少しアングルを上げたカットだとわかりやすいだろうか。手前の段差に顎を載せてだらりとしている感じが見て取れると思う。

石垣の中の奥まった場所で寝ていたので、ライティングが非常にやりづらかったが、これもLaowa24mmがあると楽になるんだろうなあ…と言う感じで。実際手に入れたら使えるシチュエーションの方が少なそうなのがつらいところだが(笑)

(2018.08.20追記)
ところで、ちょっと前からライティングにお遊びを仕込んだ…と言っていたが、そろそろネタばらし。
ポトレの世界ではもはや常識となっているかも知れない手法で、仕込んだネタはカラーシフトと呼ばれる物。フラッシュに小細工をして撮影する。まあ小細工って言う程大袈裟なもんでもないのだが。何やったかって言うと単にカラーフィルターを装着するだけ。例えばオレンジ系のカラーフィルターをフラッシュに装着して撮影したとする。普通ならオレンジ色の閃光でオレンジ色に染められた写真になる訳だが、ここでWBの設定をカラーフィルターをキャンセルする寒色方向に調整してやる。そうするとフラッシュの光が届く部分はWBで調整された色になり、フラッシュの届かない定常光成分が寒色方向にズレる。原理的にはフィルター色をWBでキャンセルすれば、フラッシュ光の届かない部分は色相環でフィルターの色の補色となる色に染まる。オレンジのフィルターなら青方向、緑のフィルターならピンク方向と言った具合だ。上の写真もこの方法を使ったもので、フラッシュ光をスポット的に絞って光の当たる範囲を制限し、残りの部分はスロー気味のシャッタースピードで暗めに撮ってやる事により寒色方向にずらした。なので顔の周辺は通常の色味になり、暗い部分にある胴体は青方向にズレているのがわかると思う。直近で他にこの手法を使った写真は8/9のクロメンガタスズメと、8/6のモリアオガエルがそう。
ちなみにLightroomなんかでスプリットトーニング(明暗別色調補正)をやっても似たような結果が得られるが、その場合フラッシュの光が当たっているにも拘らず暗い部分(例えば黒い瞳孔とか)も色味がズレてしまうので、また少し違ったニュアンスになる。なのでこの辺は表現したい方向性で使い分ければ良いだろう。

僕的にこの手法を用いるメリットは、①煩雑な背景を色によって支配(染める)する事で情報量を減らしたり、②主要な被写体のWBは維持したまま闇夜の雰囲気を出したりする事にある、と思う。どちらかと言えば作品作り向きなので、記録写真には不向きだとは思うが、まあこう言う表現もあるよ、と言う事で。

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