これまで長らくの間、D500で撮影した写真は安定感に欠けると思っていた。界隈でよく言われる歩留まりが悪いと言うやつだ。だけどやっとその原因が分かった気がする。
ライティングは基本的に焦点距離及び撮影距離に合わせて変えるべきモノで、それが少しでも狂うと繊細さ、解像力に大きな影響を及ぼしてくる。原理的には焦点距離が長くなり、撮影距離が長くなるほどライティングは大掛かりで困難になりやすい。ぼくのライティング機材を実際に見た事がある方ならわかるかも知れないが、他のライティングに比べて比較的距離に対する制約が弱い。これは逃げ一徹で常に遭遇する距離が変動する蛇に対応するために考え出したライティングだからで、おおよそ300mm前後までなら一定したライティングは理論上可能だ。もちろん他の面で弱点も多々あるが。
少し脱線したが、とにかく自然撮影においては焦点距離が伸びるほどライティングが困難になる。となるとフルサイズと比べて焦点距離が約1.5倍相当の画角になってしまうAPS-Cでは、安易にレンズチェンジやズームをすると、思った以上に画角も狭くなっている事がある。ココが最大の原因で、焦点距離・撮影距離に合わせて機械的にライティングも変動させている訳ではないので、ここでの人為的ミスがモロに影響を受ける形になりやすい。元々D500は光線状態が悪くなると一気に画質が悪くなるので尚更だ。

上の写真もD500にMicro Nikkor 60mm f/2.8Gで撮影したものだが、繊細さに欠ける。線の細いきめ細やかさが足りない。と言った印象を受ける。このケースはどちらかと言うとライティングの運用の方に原因があるパターンで、灯具を被写体であるマムシに思ったより近付けることができなかった事に起因する。マムシの頭上の岩が邪魔だった事と、これ以上灯りを近づけるとマムシが表情を変えそうだったと言うのが最大の要因だ。蛇はそう都合の良い場所にはまずいない事、物が近づくとすぐ表情と姿勢を変える事、この辺りが蛇撮りの難しい所でもある。
代替の利かない画角ならともかく、どうせライティングとカメラの位置が同じになるのであれば、少しでも画質の良いフルサイズに90mm MACROでも使用していた方がマシになっていたはずだ。正直機材を変えて撮り直したい案件である。

とまあぼやいていても仕方が無いので、少しでもマシにならんかと今回の写真は色々弄っている。普段は撮ったそのまま現像を追い込むことを殆どしない(と言うか現像が苦手で、弄るとあまり綺麗にならない)ので、僕にしてはかなり手を入れた部類の写真。比較対象は少し前にTwitterに上げたので興味ある人はそちらと見比べて見て欲しい。主に露光量周りを弄っているのと、スプリットトーンで明暗部にそれぞれ別のカラーを気持ち乗せている。

ところで、このままではD500+Micro Nikkor 60mmがイマイチみたいな印象を与えてしまいかねないので、もう少しマシ(?)な物も貼っておこう。

灯火に飛来したクチバスズメ。これも上のマムシと全く同じ機材、ライティングで撮っているが、ライティングの当て方だけが少し違う。被写体であるクチバスズメの上に障害物が何も無かったので割と自由にライティングをできているため、胸部の辺りを見ればしっかり解像をしているのはわかって頂けるかなと。(と言ってもファイルサイズの制約によりやや圧縮がかかっているが)

あとは脱線ついでに色々思っていた事をつらつらと。
ひとつめ。こう言うライトに飛来したけど勝手に草にぶら下がってるパターンの場合、説明した方が良いのかどうか毎度悩んでしまう。僕はやらせ(人の手を加えているのに加えていないと装う事)が嫌いなので、どうした物かなと。とりあえず灯火に飛来したと書いておけば充分かな?と言う感はあるのだが。

ふたつめ。普段蛾の同定には「みんなでつくる日本産蛾類図鑑V2」と言うサイトにお世話になりっぱなしである。お世話になりっぱなしなのにこんな事を言うのは大変申し訳ないのだが、蛾の分類に疎く見た目から判別していくタイプの僕みたいな一般層には目的の種を探し出すのが非常に難しいのではないかと思っている。と言うのも、種を追い込んで行く際に最低でも分類がわかっているか、もしくは成虫画像一覧の画像から探し出すかになるからである。分類に疎い人間には属などわかるはずもなく、成虫画像一覧を開いた時には同種のサムネイルがずらずらと並んでしまい、最低限全種見比べさせて欲しい状況には向いていない。使い方に合った物が無いなら自分で作れば良いではないか、と言う話でもあるのだが、いかんせん僕が撮った写真では種類が少なすぎるのでどうしたものか。これは蛾に限った話ではなく、両生類や蜘蛛なんかもそうで、外観での判別が困難な種の同定には毎度苦労してしまうのが現状。一般層でも確実に同定まで辿り着ける物が何かあれば良いのだが…と常々思っているのだが、同じ悩みを抱えた人間はどれ程いるのだろうか?まあニッチな界隈ではとりあえず図鑑があるだけでもありがたい事は重々承知なのだが、自分のようなライトな層には大変難儀である。

みっつめ。上のクチバスズメのように蛾類の表から撮った写真の場合どこにピントを合わせるか毎度迷う。上のクチバスズメの例で言えば胸部にピントを合わせた上でだいぶ絞っているが、これでは絞りを少し開いただけで翅がボケてしまう。あまり絞ると背景が煩くなって好みで無くなる事も多々あって悩ましい。この辺は距離感やら被写体の大きさで慣れて行くしかないのかも知れないが。

ちなみに上のカットはトビイロスズメの翅にピントを合わせてみたパターン。こちらはD750に35mmのレンズで絞りは開け気味。胸部がボケてしまっているが、雰囲気は伝わるのでシチュエーション次第だろうか。うーん、難しい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です